仕事や人間関係で嫌なことがあったら、つい酒に逃げてしまうことってあるんじゃないでしょうか。
誰かを飲みに誘ったり一人でやけ酒したりと、酒を飲めば嫌なことを忘れられると思い浴びるように酒を飲むこともあるかもしれません。
これに関しての研究もあります。
カリフォルニア大学のショーファット・オフィアらのおもしろい研究があります。報告によると、メスにふられたオスのハエは、アルコールの入ったエサを好んで食べたそうです。つまり、ハエでさえもやけ酒をするということです。
このことから、私たち人間が酒を求めるのはハエも同じということから自然な行動とも言えます。ストレスを感じたら酒が飲みたくなるのはハエも同じって面白いですね。
ところが、やけ酒をすると非常にヤバいこともわかっています。
なんと、酒に逃げると嫌な記憶が忘れられなくなる
東京大学大学院薬学系研究科の松木則夫教授のグループの研究では、ネズミに電気ショックを与え、その後アルコールも与えるとどういうふうにふるまうか調べたところ、アルコールを与えられたネズミは電気ショックのことを忘れないどころか、かえって恐怖を強め臆病になってしまったとのことです。
この結果を人間に置き換えると、嫌な出来事を忘れようと酒を飲んだとしても、気分がいいのはその場だけで、次の日には楽しかったことも覚えてないどころか嫌な記憶が定着して忘れられなくなる、ということにもなります。
私も仕事や人間関係でストレスを感じ「早く忘れたい」と、つい酒が飲みたくなってしまうことが多くありますが、これはかえって嫌な記憶が頭から離れなくなってしまう危険な行為ということです。
酒を飲みすぎると「よく覚えてない」ということもありますが、それはあくまで一時的なもので、次の日どころか長期的に「忘れられなく」なってしまいます。
酒は「嫌な記憶を消す」能力も下がってしまう
また、アルコールを摂取していない通常時は嫌な記憶を適切に「忘れる」能力が脳に備わっていますが、アルコールを常習すると、嫌な記憶を消すための能力が下がってしまうというアメリカ国立衛生研究所のホームズらによる研究結果もあります。
毎日酒を飲む人も多くいると思いますが、酒を飲めば飲むほど嫌な記憶は消えないどころか逆に脳に鮮明に刻み込まれてしまい、どんどん消えなくなってしまいます。
すると、また忘れたいから酒を飲み、酒が抜けると嫌な記憶を思い出してしまうからまた酒を飲む、といった悪循環にも陥ってしまいます。
本来なら鉛筆で書いた落書きを消しゴムで消せていたのが、酒という成分によってボールペンのインク痕になってしまい、消しゴムではもはや消せなくなってしまった状態とも言えます。
恥ずかしいのを忘れるためにお酒を飲む
「星の王子さま」に出てくる酒呑みとの会話で、
王子様「どうしてお酒を飲むの?」
呑み助「恥ずかしいからだよ」
呑み助「恥ずかしいのを忘れるためにお酒を飲むんだ」
王子様「どうして恥ずかしいの?」
呑み助「お酒を飲んでいるのが恥ずかしくて、それを忘れたいからお酒を飲むんだよ」
こんなシーンがありますが、これを今回の内容に当てはめてみると「嫌な記憶を消したくて酒を飲んでるのが恥ずかしいから」またお酒を飲む、とも捉えられるかもしれません。
お酒のダメージで元の脳に戻らなくなる
お酒が脳に与えるダメージは不可逆と言います。つまり一度アルコールを浴びてしまい脳が変形すると、「ぬか漬けになったきゅうりが元に戻らない」のと同じように元の脳には戻らないとも言われます。
ほどほどのお酒は気分もよくなりますし、仕事など付き合いで飲む分には必要な機会もありますが、合間に水を飲んだりと適度に嗜んでいくのが大切です。